政府系の金融機関として、融資のみならずM&A業務や投資業務を幅広く行っている日本政策投資銀行。
近年では社会問題を解決するための投資業務にも力を入れており、まさに日本の屋台骨のひとつと言っても良い企業です。
そんな同社ですが、実は時代の変化に合わせて「今までのままではいけない」という問題意識がありました。
抱えていた課題と、それを解決する手段としてなぜ「MGオンライン」を選んだのか。
研修を担当されている審査部の土田様、冷泉様にお話を詳しく伺いました。
新入社員研修として「MG研修」を検討していた際に知りました。
マネジメントゲームMG研修自体は私のときの新入社員研修で受講したことがありましたが、ここ数年は研修プログラムの内容が変更になっていたために実施されていませんでした。
ただ、毎年研修内容の改善を図っている中で、今年度改めてMG研修を復活させようと思い検討していました。
私としては、MG研修には2つの意味があったと思います。
ひとつ目は、B/S、P/Lといった財務諸表の内容をしっかりと理解するための、簿記会計知識の習得・浸透につながるということですね。
MG研修では、企業の設備投資、人員採用、仕入、販売にかかる戦略についての経営判断が行われると簿記会計上はどのように表現されるのか、最終的にはB/SやP/Lにどのように反映されるのか、ということが体感できます。これがひとつ大きな要素です。
もうひとつが、ビジネスジャッジの「感覚」を磨くことができることです。
有価証券報告書を眺めてB/S、P/Lといった出来上がった数字だけを相手にしていると、どうしても机上調査の域を出ません。
実際の弊行の仕事の場面で考えると、従来から行っていた融資業務に加えて、投資業務も増えてきていますし、場合によっては融資先のモニタリング業務や、投資先に弊行職員を役員派遣することを通じて間接・直接的に投融資先の経営に関わっていく、というような業務バリエーションがこの10年くらいで増えてきました。弊行の投融資先の企業経営、すなわち、より具体的に言うと、ひとつひとつの設備投資の要否、投資規模の適正性、タイミングなどのジャッジメントに関わる機会というのが格段に増えてきているんですね。
近年の弊行でのこうした業務内容の変化も踏まえれば、自分自身が新人のころにMG研修で経験した企業経営の様々な局面のジャッジメントを、なおさら今の後輩たちにもやはり新人のうちに経験させたいなという思いが出てきまして、久々に復活という流れになりました。
受講する人数が、50名程度と私のころよりもかなり多くなっているという物理的なこともありますが、一番の理由は「経営体験」に研修のウェイトを置くためです。
ボードを使用した研修では、ひとつ意思決定をすると仕訳を行い、期末になると帳簿を閉じる、というように、ある意味簿記3級レベルの知識を振り返るという目的では良いところもあったと思いますし、実際その効果は捨てがたいなという思いもありました。
一方で時間がかかり、また研修受講生の意識がひとつひとつの仕訳や期末の決算処理を正確に行うということに持っていかれてしまうため、意思決定だけに集中することができません。
オンラインだと仕訳や期末の決算処理を自動的に行うことができるので、今回は数量・単価の設定が業績に及ぼす影響や利益増減の要因分析に専念してほしいという思いからオンラインで実施することにしました。
また、オンラインではオプションとして、経営計画を事前に立てることができます。数量をいじる、単価をいじることでどのような結果になるのか、自分が抱えてしまった固定費を踏まえてそのうえで利益を出す(損益分岐点を越える)ためには、仕入・販売価格、数量をどのように設定すれば良いのかを試行錯誤しながらプレイしてもらうことに意味があると考えました。
こういった面から、人数が増えたというようなことよりも、より積極的にオンライン版を選択しました。
入社前に一応簿記の勉強はしてもらっていて、入行後は会計士さんに講師をしてもらって財務分析の教科書に載っているようなさわりの部分を勉強していきます。連休明けからは上場企業の実際の公表データを例にとり、今までに学んだ財務会計の技術を使って財務分析を行っていきます。
そのため、MG研修は一通り財務会計などを勉強した段階で、実践の場として行っています。
5人くらいのグループに分けて、それぞれに講師を1人ずつ付けながら行います。
経営は5期行う予定ですが、みんなには「6期やる」と伝えています。
どうしても最後の期では、売り切るための安売りや新しい在庫の未仕入れなど、現実ではありえない動きになってしまうので、より自然な前提でやるために6期までやると嘘をついています(笑)
オンラインだと、仕訳や期末の決算処理が自動で行われるため、さくさくゲームが進んでしまいます。しかし、目的意識をはっきりさせない進め方では、固定費・変動費や損益分岐点をじっくりと考える前にゲームが進んでしまい、「なんか面白かったなぁ」というだけで、こちらで想定する研修効果が薄れてしまうかなと思っています。そのため、1期やるごとに最初立てた計画と、実際にやってみてどうだったのか、何が上手くいって何が駄目だったのかということを振り返らせ、講師からもフィードバックをして、次期の経営計画作成・実践にその学びを活かしていくという形にしようと思っています。
経営が40~45分、フィードバックや経営計画を立てる時間が15分くらいで、1期1時間くらいですね。
現実的な計画を立てて、うまくいかなければ改善して、ということが、思い込みや感覚ではなく数値・理屈に基づいてできるようになればと思っています。
決算書を考えてお尻から逆算し、売上至上主義ではなくちゃんと「利益を出す」という意識で考えられるようになれば良いなと思っています。
・質か量か、入札の際に自分になんの強みがあるのか把握する必要があった。
・売上高は「販売個数×単価」ということを実感し、経営の難しさを感じた。
・供給過剰になると価格が下がるという需給バランスによる価格調整の理論を実際に体験した。
・売上を上げるときに「価格」の面にばかりとらわれて、数量をおろそかにした結果、最後になるまで利益を計上させることができなかった。売上の2要素は片方だけでは成立しないことを身をもって知った。
・固定費の中で人件費が占める割合が非常に高く、また退職を促すこともできないため、人員の有効活用がカギになっていたのかなと思います。
・2期末に債務超過となり、毎期販売によるキャッシュを獲得せねばならず大変だった。債務超過の原因としては従業員の規模を読み誤ったため。
・もっと踏み込んだ経営をすべきだった。リスクを恐れて投資を進めることができなかった。
・初めて会社経営を行いましたが、固定費の計上や価格競争、ストライキなど様々な局面に直面し難しいと感じました。
・自分の目指す経営スタイル・規模感を見誤ってしまったがために、後半の経営指針がブレブレになってしまった。
・競売で思うように売上を上げられなかったり、固定費を削減するのに苦労したりと、普段PLやBS上で分析していることが現実ではいかに難しいのかがわかりました。
・自分が何をしたいかよりも周囲の状況を見てなにをすべきか考えて行動をした結果、効率が良かった。
・市場規模が伸びてこないのは苦しい。
・1期中に無理に利益を出そうとするのではなく、長期的に利益が出せる体制を作り出すことを意識した。
・薄利多売戦略か高級路線かどちらの戦略をとるのにも徹底しないと飲み込まれると感じた。
・キャッシュの余裕が速い決断につながることもあり、資金面を支える仕事の重みは感じられたと思います。
・銀行借入は企業活動にとって悪いことではなく、利益を上げるためには必要だと改めて実感した。
「MGオンライン」を行うことで、「机上の調査」で終わらない経営体験をした新入社員の皆さん。
これからこの経験を活かして実社会へと飛び立ちます。
願わくばマネジメントゲームMG研修が日本政策投資銀行の、そして日本の発展の一助になれば幸いです。
会社名 | 日本政策投資銀行 |
資本金 | 1兆4億24百万円 |
代表者名 | 渡辺 一 |
従業員数 | 1,182名(2018年3月末) |
業務の範囲 | ・出資・融資・債務保証等の業務を基本として、新金融技術を活用した業務を行う。 ・社債や長期借入金による資金調達に加え、国の財政投融資計画に基づく財政融資資金、政府保証債等の長期・安定的な資金調達を行う。 |